逡巡しながら日記。

小鳥と人間のとるにたらない日常。

ミュンヘン大橋からの街あかり

Kは今日も夜九時くらいに家を飛び出して、夜の空気を吸いに行った。日中降っていた雨はやみ、昨日よりも更に涼しい空気のなかを自転車で豊平川を目指した。Kは豊平川が好きだった。豊平川があったから札幌という街を好きになれたと前に言っていた。どうして豊平川が好きなのか、などとはこれまで考えたこともなかったが、今日答えのひとつを発見したという。それはたぶん視界が急に開けるからなのだと。札幌という街は、街を俯瞰することがなかなかできない。開けた場所があまりないのだ。それが、豊平川にくると、一気に視界が回復する。藻岩山から連なる山々のシルエットも一望に見渡せるのも魅力的だ。Kは折り返し地点として設定したミュンヘン大橋に着くと、橋の真ん中でおもむろに自転車をとめた。音だけが聴こえる豊平川の暗い流れを辿っていくと、ゆるやかに曲がる線上からやや左側に街の夜景が遠くに見えた。いつくのもビル群がカラフルな明かりを燈して、ある場所は点滅していた。Kはこれまで夜景に関心をもったことがなかった。今日はじめてきれいだと思った、と帰宅してうれしそうに語った。

そして、わたしをそっと手のひらに乗せて優しく羽をさすった。