逡巡しながら日記。

小鳥と人間のとるにたらない日常。

北海堂

煌びやかなススキノの一等地に、場違いのような古書店があった。Kはその古書店「北海堂」が好きだったね。お金がなくて何も買えないときも、店主はKを邪険に扱うことなく、いつも気軽に話し相手になってくれた。洒落た会話のできる紳士、それが北海堂の店主への印象だった。政権を茶化してやべえさんやべえさんといっては、ニヤリと笑った顔を思い出す。本の話しは一度もしなくて、いつも政治への愚痴から始まって最後はトロ6の話で終わったっけ。店主のダジャレが好きは、北海堂のもとを作ったという店主のお父さんゆずりのものだったのかな。でもその北海堂も半年前くらいからシャッターが下りたまま。看板もなくなっていた。Kにとって北海堂は、札幌のなかの数少ないオアシスのひとつだった。寂しさが心に澱となって沈むようだね、K。